第22話|声の圧に、反射しそうになった日

職場で内線が鳴った。
受話器の向こうから、
少し強めのトーンの声が聞こえてきた。

用件そのものより、
声に含まれたニュアンスが引っかかった。

「早く反応してほしい」
そんな圧が、言葉の間から伝わってきた。

その瞬間、
身体が一瞬だけ反射しそうになる。
急がなきゃ。
相手のペースに合わせなきゃ。
そう動きかけた自分がいた。

でも、そこで立ち止まった。

これは用件の問題ではない。
相手の焦りが、
こちらに流れ込んできているだけだ。

そう気づいた途端、
胸の奥に少し距離が生まれた。

私は急がなかった。
声の調子も変えなかった。
必要なことだけを、
淡々と返した。

電話を切ったあと、
思ったほど心は乱れていなかった。

以前なら、
相手の圧をそのまま受け取って、
しばらく引きずっていたと思う。

今日は違った。

相手の感情は、相手のもの。
私が背負う必要はない。

その線引きが、
ほんの一瞬できただけで、
心の疲れは大きく違った。

イラついた自分を、
責める気にもならなかった。
それは、自分を守る感覚が
ちゃんと働いた証拠だからだ。

私は今日、
声の圧に巻き込まれずに、
自分のペースを守ることができた。

圧を感じた時、
すぐに反応しなくていい。
一拍おくだけで、
心はちゃんと戻ってくる。