第26話|反射して、あとから気づいた日

スーパーで買い物をしていた。
目の前で人が立ち止まった。

その瞬間、
身体が先に動いた。
反射的に避けて、横を通った。

止まることもできたはずなのに、
考える前に、身体だけが進んでいた。

通り過ぎたあと、
胸の奥に小さなイラつきが残った。

なんで、あんなに急いだんだろう。
なんで、立ち止まれなかったんだろう。

一瞬、
「選択できなかったな」
そんな言葉が浮かんだ。

でも、少し時間が経ってから、
別の見方ができた。

あれは失敗じゃない。
ただ、反射だった。

混雑。
進路を塞がれる感覚。
予測できない動き。

身体が、
安全のために先に反応しただけだ。

大事なのは、
そのあとだった。

イラついた自分に気づいた。
反射だったと分かった。
飲み込まれずに、
こうして言葉にできている。

以前なら、
イラつきの理由も分からないまま、
気分だけが重くなっていたと思う。

今日は違う。

反射して、
あとから気づいた。

それだけのことなのに、
それが少し嬉しかった。

止まれなかった日も、
気づけたなら十分だ。
それは、もう選択の途中にいる。