境界線という言葉を、
私は最近まで、ちゃんと知らなかった。
だから今思えば、
境界を侵してもきたし、
散々、侵されてもきたのだと思う。
断らずに引き受けることが優しさだと思っていた。
相手の都合に合わせることが、大人だと思っていた。
自分の違和感を後回しにすることが、
生きていくための知恵だと信じていた。
でもそれは、
境界線がないまま生きることだった。
境界線がないと、
どこまでが自分で、
どこからが他人なのかが分からなくなる。
相手の期待が、
いつの間にか自分の義務になり、
相手の機嫌が、
自分の価値の基準になる。
気づかないうちに、
自分の内側は、
何度も踏み越えられていた。
そして同時に、
私自身も、
誰かの境界を踏み越えていたのだと思う。
良かれと思って。
役に立ちたくて。
嫌われたくなくて。
境界線を知らないまま生きるというのは、
誰かを守ることでも、
自分を守ることでもなかった。
今日、ふとした瞬間に思った。
こんなに、
自分のことを守っていいんだ、と。
全部を拒むわけじゃない。
全部を閉ざすわけでもない。
ただ、
「ここまでは私」
「ここから先は私じゃない」
その線を引いていい。
それだけで、
世界は少し静かになった。
境界線は、
人を遠ざけるためのものじゃない。
自分を、
生き延びさせるためのものだった。
