第14話|沈黙のあとに戻ってきたのは、疲れだった

感じることを取り戻した身体が教えてくれたこと

沈黙を選べるようになったあの日のあと、
私の中で最初に戻ってきたのは、意外にも「疲れ」だった。

胸の奥に沈んでいた倦怠感が、
ゆっくりと浮かび上がってくるようだった。

今までの私は、
疲れを感じた時点で動くしかなかった。
誰かに合わせ、
空気を読み、
期待に応え続けるしかなかった。

だから「疲れ」を感じるという行為そのものが
許されなかったのだと思う。

沈黙を選べたことで、
初めてその感覚が姿を現した。

あぁ、私はずっと疲れていたのだ。
それに気づくことすら、後回しにしていたのだ。

静けさの中で、
その事実がゆっくりと身体に染みていく。

疲れは弱さではなかった。
怠けでも、逃げでもなかった。

それは、
「やっと自分のことが感じられるようになったね」
と身体が告げてくれる合図だった。

疲れは、終わりのサインではなく、
始まりのサインだったのだ。

本音に触れたあと、
身体が重くなるのは当たり前だった。

感情を思い出すということは、
ずっと閉じ込めていた荷物に触れることだから。

疲れを感じた私は、
そこで初めて、こう思えた。

“休んでいいのかもしれない”

この言葉が胸に浮かんだだけで、
世界が少し柔らかくなった。

沈黙のあとに戻ってきた「疲れ」は、
私がずっと見捨ててきた自分が
ようやく声を上げてくれた証だった。

疲れを感じられるようになった私は、
やっと「自分の身体と同じ場所」に戻ってこれたのだと思う。