第7話|私は、静かでやさしい世界を探していた

誰も傷つかず、誰も演じなくていい場所

止まったあと、私が望んだのは
大きな成功でも、
新しい自分でもなかった。

ただ静かで、
やさしい世界だった。

そこには競争もなく、
正解もなく、
期待に応える必要もない。

なにかを証明しなくても、
居ていいと言われるような場所。

私は、誰かと繋がりたいわけではなかった。
けれど、完全にひとりでいたいわけでもなかった。

ただ、
何も奪われない時間の中で
自分の呼吸を思い出したかった。

その頃の私は、
怒られないために動き、
嫌われないために笑い、
期待に応えることで存在していた。

静かな世界を欲した理由は、
やさしさを求めていたからではない。

私は、私を守れる場所を
知らなかっただけだ。

誰も責めない空気の中で、
はじめて私は、
自分の感情がまだ生きていることを知った。

音の少ない世界の方が、
心の声はよく聞こえる。

その静けさの中で、
やっと私は気づいた。

生きづらさの正体は、
環境ではなく、
自分を置いてきた場所にあったことを。

静けさとは、逃げ場ではなかった。
そこにしか、私の声が残っていなかっただけだ。