未道録

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第13話|沈黙は逃げではなかった

誰のためでもない時間を、初めて自分に使った日苛立ちを感じられるようになった私は、何かを始めたわけではなかった。むしろ、止まった。返事を急がない日が増えた。考えているふりをすることもやめた。説明しないことに、罪悪感が少しずつ薄れていった。私は...
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第12話|戻ってきたのは、大きな感情ではなく小さな苛立ちだった

怒りの残り火が、私の感情を温め始めている。本当の感情は、劇的に戻ってくるわけではない。私の中で最初に動いたのは、涙でも笑顔でもなく、小さな苛立ち。それは誰かを責めるためのものでも、爆発するような怒りでもない。ただ、「なんで私ばっかり」「どう...
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第11話|“役割としての私”の先に、本当の私がいた

望まない人生の外側に、やっと輪郭が現れた望まない役割を生きてきた私は、いつしか「やりたいこと」がわからなくなっていた。何を望むかではなく、何を求められているかで動いてきたからだ。気づけば、「好き」と「正しい」は同じものだと思っていた。誰かが...
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第10話|望まない役割が、私の人生を決めていった

境界線の外側で、生きさせられた日々怒りの始まりは、出来事ではなかった。それは、役割だった。頼んでもいないのに与えられた立場。断れない空気の中で、選ばされる未来。気づけば私は、私の望みよりも誰かの都合の中で動いていた。「頼むよ」「お前ならでき...
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第9話|私は怒りを封じて生きてきた

本当はずっと、傷ついていたのに怒りは、私の中で一番触れてはいけない感情だった。怒ったら嫌われる。怒ったら見捨てられる。怒ったら居場所がなくなる。そう思っていた。だから私は、怒りを感じた瞬間に笑顔で上書きしてきた。「大丈夫」と言えば、何も起き...
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第8話|貼りつけた笑顔が、私を苦しめていた

やさしさの仮面を外した日私はずっと、笑っていた。嬉しいからではない。楽しいからでもない。期待に応えるために、その場の空気を壊さないために、笑うしかない場面が多すぎた。笑顔は、私の身代わりだった。本当の気持ちを隠し、何も感じていないような顔を...
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第7話|私は、静かでやさしい世界を探していた

誰も傷つかず、誰も演じなくていい場所止まったあと、私が望んだのは大きな成功でも、新しい自分でもなかった。ただ静かで、やさしい世界だった。そこには競争もなく、正解もなく、期待に応える必要もない。なにかを証明しなくても、居ていいと言われるような...
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第6話|もう続けられない、その感覚だけが真実だった

理由のない限界に、私は先に触れていたある日、突然だった。何が嫌なのか、どこが苦しいのか、誰が悪いのかもわからないまま、ただ、「もう無理だ」という感覚だけが体の奥に沈んでいた。理由はなかった。説明もできなかった。けれど、言葉よりも先に、私の中...
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第5話|私はずっと、誰かの期待に住んでいた

気づいた時には、私は私の人生を生きていなかった。何を選ぶかよりも、どう思われるかの方が大事だった。行動する理由はいつも自分の外側にあり、私はそれに合わせて動くだけだった。期待に応えることは、優しさではなかった。ただ、生き延びるための方法だっ...
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第4話|期待に応える度に、私の時間は他人のものになっていった

いつの間にか、私は自分のペースで生きることを忘れていた。誰かに頼まれたことがあると、予定を調整する前に身体が動いてしまう。本当はゆっくりしたい日でも、期待に応えられる自分でいようとしてしまう。断らない私が“良い私”で、応えられない私は“価値...