第4話|期待に応える度に、私の時間は他人のものになっていった

いつの間にか、私は自分のペースで生きることを忘れていた。

誰かに頼まれたことがあると、
予定を調整する前に身体が動いてしまう。
本当はゆっくりしたい日でも、
期待に応えられる自分でいようとしてしまう。

断らない私が“良い私”で、
応えられない私は“価値がない私”のように感じていた。

気づけば、私の時間は
私のものではなくなっていた。

楽しむ時間も、
休む時間も、
考える時間も、
全部「誰かのため」に塗り替えられていった。

ゆっくり歩く日も、
立ち止まる日も、
ただぼんやりする時間も、

そんなものは必要ないと言われているような気がしていた。

心が迷子になってから、
私は“他人のリズム”で生きることを選んでしまったのだと思う。

早く動く日には急ぎすぎて息が切れ、
遅く動く日には置いていかれるような気がして落ち着かない。

生きているのに、
人生に参加している感覚がなかった。

自分のペースを失うとは、
ただ忙しくなることではない。

私がどこにいるのか、
何を望んでいるのか、
どこに向かっているのか、

その感覚そのものが薄れていくということだった。

誰かの期待に合わせる生き方は、
自分のペースを手放すところから始まっていた。