第6話|もう続けられない、その感覚だけが真実だった

理由のない限界に、私は先に触れていた
ある日、突然だった。

何が嫌なのか、どこが苦しいのか、
誰が悪いのかもわからないまま、

ただ、
「もう無理だ」
という感覚だけが体の奥に沈んでいた。

理由はなかった。
説明もできなかった。
けれど、言葉よりも先に、
私の中の何かが崩れていく音だけは聞こえていた。

周りから見れば、まだやれるように見えただろう。
実際、できていた。
笑うことも、働くことも、求められれば応えることも。

なのに、どれも自分の動きではない気がしていた。

感情は動かず、
景色は色を失い、
息はしているのに、
生きている実感はなかった。

「どうして?」と聞かれても答えられない。
説明しようとすると、余計に遠ざかっていく。

私はただ、
本当の自分がどこにもいないまま
動き続けていただけなのかもしれない。

気づいたのは、その感覚が限界を超えたときだった。

もう歩けないのではなく、
もう“この歩き方”では進めなかったのだ。

限界は、壊れる前に訪れる。

理由のない「もう無理」は、
終わりではなく、
始まりのサインだった。