この違和感こそが、私の道の始まりだった。
誰にも責められていないのに、
私だけが苦しくなっていった。
気づいたのは、仕事の最中だった。
頼まれた仕事を「できません」と言えなかった。
断るという選択肢は、最初から持っていないもののようだった。
やりたくないはずなのに、身体だけが前へ進んでいく。
そのたびに、自分の内側を静かに押しつぶしていた。
誰かに強制されたわけではない。
怒鳴られたわけでも、責められたわけでもない。
それなのに、私だけが苦しくなっていく。
苦しみの理由は、仕事そのものではなかった。
“選べないままの自分”で生きていること——
その静かな痛みに、ようやく気づいた。
本当は動きたくなかった。
ただ、ほったらかしたかった。
それでも私はまた、誰かの意思に合わせて動いていた。
止まれないまま動く私と、
止まりたいまま動かされていく私。
そのふたつが、胸の奥で擦れ続けていた。
そして気づいた。
煮え湯を飲まされていたのではない。
私は、自分の手で自分の口に
熱い痛みを流し込んでいたのだ。
苦しみの正体は、
できない自分ではなく、
選べない自分だった。
この違和感こそが、私の道の始まりだった。
